社会的学習理論(観察学習)
カナダ人心理学者のアルバート・バンデューラ(1925~2021)は、ボボ人形実験から、人は自ら経験して学ぶ直接学習だけでなく「他者の行動を観察することで学ぶ」ということを証明しました。ボボ人形は風船のように膨らませた人形で、子供たちを実験群と対象群の2つのグループに分け、実験群の子供たちには大人がおもちゃの部屋でボボ人形に乱暴している様子を見せ、もう一方の子供たちには、大人がボボ人形で遊んでいる様子を見せました。その後、各グループの子供たちに、ひとりずつ同じ人形のある部屋へ入ってもらいました。実験群の乱暴な大人の様子を見せられた子供たちは、もう一方の子供たちよりも明らかに人形に対して攻撃的でした。
子供が自分で経験していなくても、大人の様子を見ることで、自発的に模倣し、学習したのです。これは行動主義の、レバーと電流とチーズでネズミが懲罰と報酬を学習した「オペラント条件づけ」では説明できません。単に他人がする行動を模倣するだけでなく、他人が報酬や懲罰を受ける様子を観察することでも、自身の行動を強化できます。これを「代理強化」といいます。
新生児模倣
アメリカの心理学者アンドリュー・メルツォフ(1950~)は、生後12日から21日の新生児には、大人が舌を出す、口を開ける、口をすぼめるなどの顔の動きを模倣することができるという実験をしました。考えられているよりもずっと早い段階で顔の表情を動かすことができるのです。他人の感情を理解するために他人の表情を読み取る力、自分の感情を表現するために自分の顔を部分的に動かすということができるのはもう少し先ではあっても、ただ動かすことだけを目的にすれば、生まれてすぐにできるように備わった能力なのです。
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