アイデンティティの危機
エリクソンのアイデンティティの考え方を発展させ、アイデンティティクライシス(危機)と打ち込む対象(積極的関与)の有無によって、4つのアイデンティティの状態の分類を提唱したのが、アメリカの臨床発達心理学者のジェームス・マーシャ(1937~)です。
青年期は急激な身体的変化が起こるため、自分自身の過去と未来のつながりが感じにくくなります。また、進学や進級による友人関係の変化、恋愛による人間関係、さらには親との関係も、子供時代に比べて変化しやすく、それまでに自分が築いてきた自己像が不確かになりやすい時期です。「アイデンティティクライシス」とは、この「これが自分」と思っていた自己像を喪失することをいいます。
アイデンティティ拡散型【危機:経験あり/経験なし、打ち込む対象:なし】
自分の人生における打ち込む対象について主体的な選択ができない状態です。何がやりたいのかわからない、または「自分がどんな人間であるのか」という疑問をもったことがありません。危機を経験しておらず打ち込む対象もない場合は、これから自分が何者になるのかという想像ができていない状態です。危機を経験しているが打ち込む対象がない場合は、将来や方向性に積極的に向き合わず、関与を回避して無関心の状態を維持することであらゆる可能性を持っておこうとするタイプです。
早期達成型【危機:経験なし、打ち込む対象:あり】
打ち込む対象に迷うことなく、他者に決められた権威主義的価値観を身に着けたのが早期アイデンティティ達成型の人です。危機を経験していないので、心理的な迷いや悩みの経験がないので、自分の価値観が通用しない状況に置かれると防衛的な行動を取り、融通が利かない印象になります。
モラトリアム型【危機:経験の最中、打ち込む対象:ない、あいまい、または積極的に探索中】
アイデンティティを確立しようとまさに努力している最中の人です。自分を取り巻く世界を予測不可能な場所と感じているため他のタイプよりも不安を経験していて、安定した状態を実現するために精力的に「自分がなにものであるか」に対する答えを見つけようと取り組んでいます。
アイデンティティ達成型【危機:経験あり、打ち込む対象:あり】
危機を体験し、それを通じて自分で選択した人生のありかたについて、自分なりの答えを見つけ出し、積極的に打ち込む対象のある人です。自分について悩んだ経験が元になっているので、自分の意思で何かを選択し、積極的に関与していく姿勢がある、最も安定したタイプになります。
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