フット・イン・ザ・ドア・テクニック
些細なことをお願いしてからのほうが、面倒な依頼も引き受けてもらいやすいという心理を利用した悪徳商法のことを「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」といいます。アメリカの心理学者ジョナサン・フリードマン(1946~)は、依頼の仕方と承諾における心理とその効果についての実験を行いました。研究グループは、二つのグループの主婦に対して、消費生活の調査員であると名乗って電話をかけます。一方のグループに対しては、初めからハードルの高い依頼(「家の中の家財道具を調査したいので、5~6名の調査員を自宅に入れさせてほしい」というもの)をします。もう一方のグループに対しては、簡単な依頼(「使用している家庭用品についてのアンケートに協力してほしい」というもの)をしてから、その3日後にハードルの高いほうの依頼の電話を改めてかけます。すると、調査員を家に入れてほしいという依頼を引き受けたのは22%でしたが、事前に調査アンケートを快諾した主婦に対して同じことを改めて依頼した場合は53%が引き受けたのでした。
ロー・ボール・テクニック
よく似たものに「ロー・ボール・テクニック」があります。ロー・ボール(キャッチしやすい低めのボール)、つまり相手が受け入れやすい条件だけで要求を提示しておいて、承諾された後で悪い条件を明らかにしたり、好条件を取り下げたりするテクニックです。車のセールスなど、最初に提示された金額に、後からオプション費用やサポート費用が上乗せされていき、当初の金額より高くなることがありますが、これは要求を承諾した場合は条件が変わっても承諾してしまうという「自己決定効果」から生まれる行動傾向を利用したテクニックになります。フット・イン・ザ・ドアが、受け入れやすいお願いのあとでちょっと厄介なお願いをするというのにたいして、低めのボールから徐々に高め・強めのボールになっていくイメージです。
ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック
依頼と承諾における心理を利用したものには、この他に「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」があります。最初は顧客から断られることを前提とした商品やサービスを薦めた後にハードルを下げ、本当に受注を狙っている商品やサービスを提案することで、受注につながる可能性が高まります。最初の難しい要求に対して断ったことで生まれる罪悪感から、次の要求が受け入れやすくなるという心理を利用したテクニックです。