事実ではない事後情報
アメリカの研究に、記憶に基づく「目撃証言」が事実と異なるものであったため、のちのDNA鑑定により冤罪(無実なのに有罪とされること)と判明した事件が、300件の裁判のうち少なくとも75%にのぼったというものがあります。目撃証言を得る為に、聞き方を間違えると、正しい記憶がゆがめられてしまうからです。
アメリカの認知心理学者で、記憶と目撃証言に関する第一人者、エリザベス・ロフタス(1944~)らによる実験です。
実験の参加者は、交通事故を描写した30枚の写真のスライドショーを見ます。次に、スライドの内容について、説明を受けます。
20分後、参加者は「停止標識」か「徐行標識」のどちらが映ったものだったかを選択します。スライドを見たあとに、実際に見た写真とは異なる誤った情報を含む説明を受けた場合(「徐行標識」の写真を見た者に「停止標識」の説明をするなど)は、一致した正しい内容(「停止標識」の写真を見た者に「停止標識」と説明するなど)で説明を受けた参加者に比べて、何の標識を見たかを誤って報告する可能性が高いことが明らかになりました。
このように、後から与えられた情報によって記憶の変容が起こることを「事後情報効果」といいます。
■エリザベス・ロフタス(1944~)アメリカの認知心理学者で、記憶と目撃証言に関する第一人者。
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