サイコパス
「サイコパス」は、一見魅力的で人を操るのが上手な、良心がや共感性が欠けた人々を言います。世間で定められたルールや常識には頓着しないので、借金を踏み倒したり、時刻や欠勤などの無責任な行動を繰り返すことがあります。また、他人の状況や感情に共感することがなく、自分が悪いことをした場合を想像したときの不安や恐怖も感じないたえ、他人に対して徹底的に冷淡で、残忍なことも平気でできます。刺激を求め、衝動性が強いことも特徴で、思い切った行動をとることができます。不安や恐怖を感じにくいため、これが社会のためになる思い切った行動である場合は、カリスマ性のある企業のトップや政治家、ピンチの時もパフォーマンスを出しきるトップアスリートや、何万人もの観衆の前でも最高の演奏ができるアーティストとなりえるのです。サイコパスであるから必ず犯罪を犯すということはなく、反社会性因子の点数が高い人が、犯罪者になる傾向が高いということです。
サイコパスの特徴
○ 対人因子
・表面的な魅力
・尊大な自己意識
・他者操作性
・虚言壁
・婚姻関係の問題
○ 感情因子
・共感性の欠如
・良心の呵責や罪悪感の欠如
・浅薄な情緒性
・自分の行動に対する責任感の欠如
○ 生活様式因子
・衝動性
・刺激希求性
・行動コントロールの欠如
・現実的で長期的な目標の欠如
・無責任性
・寄生的なライフスタイル
○ 反社会性因子
・幼少期の問題行動
・少年非行
・仮釈放の取り消し
・多種多様な犯罪歴
サイコパスを脳科学的な特徴から捉えると、情動的共感性と認知的共感性のうち、情動的共感性に関わる脳の機能が十分に働いていないことが報告されています。情動的共感性は、相手の情動や感情を自分の感情として写し取るとこで、相手の心的状態をシミュレーションする反応が両側下頭頂小葉で活発となります。悲しんでいる人のを見ると自分まで悲しくなる、という現象がこれにあたります。認知的共感は、相手の情動や感情を自分のものとして写し取ることなく、「相手は悲しんでいるのだな」と理解することを指し、相手の状況を理解し促進する反応が右前頭前野内側部に生じます。サイコパスの脳の機能として前者が十分に働かないということは、相手が悲しんでいることは認識はできても、それを写し取って自分まで悲しくなることがないということです。
左右の脳にひとつづつ存在する偏桃体は、驚きや恐怖、不安などの感情や情動に反応します。理性の中枢となる前頭前野と偏桃体はつながっていて、過去の感情にまつわる記憶が偏桃体を通して前頭前野に伝えられるために普段の生活の中でも「なんとなく嫌な予感がする」という不安な感覚が直観的判断に影響をあたえるといわれています。サイコバスの脳では、偏桃体の働きそのものが弱く、また偏桃体と前頭前野の繋がりも弱いため、一般的な行動に比べて衝動的になりやすいと考えられています。
興奮して闘争心を駆り立てるドーパミンが出やすいかそうでないかも、パフォーマンスに影響があります。報酬系というのは、やる気を出して能力を高めるための脳の仕組みです。欲しいものが手に入った瞬間、その報酬としてのドーパミンの放出により、前頭前野の活動が活発になります。サイコパスの脳では、報酬系の活動が特に高く、例えば覚せい剤を報酬として与えると、通常の4倍のドーパミンが放出された例も報告されています。
虐待などの環境要因も、サイコパスの反社会的行動を取るかどうかに大きな影響があります。幼少期にどのような環境にいたか、社会的ストレスがあるかどうかは、反社会性の抑制につながります。サイコパス的傾向がある人は100人に1~3人と意外と高く、それ自体は悪いことではありません。既存のルール、いつもとは違う状況、周囲の感情など、不安につながるはずのことがサイコパスにとっては思い切った行動を抑制する要素にはなりません。多くの人にとって役立つことや、喜ばしいことで力を発揮すれば、社会的リーダーや改革者として適性の高い良いサイコパスになるということなのです。
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