覚えた知識を体系化する心的構造「スキーマ」

学習や経験で得た知識や認知は、共通点があるものや似通ったものどうしを体系化し、まとまりとして記憶されます。この心的構造を「スキーマ」といい、イギリスの心理学者、フレデリック・C・バートレット(1886~1969)によって1932年に発表されました。その後は、発達心理学者スイスのジャン・ピアジェ(1896~1980)の研究により、スキーマという概念が広く普及しました。

スキーマは、知覚された情報を整理して解釈するための認知の仕組みです。身の周りの膨大な量の情報のうち、注目すべきものを効率的に体系立てて処理していき、同化、調節、取捨選択をしていきます。経験や学習をするたびに新しい情報が組み込まれて発達していくため、スキーマの情報は個人がどのような経験をしたかによって、それぞれ異なります。例えば、パソコンのOSやソフトウェアのバージョンが変わると、操作画面の見た目や操作方法が変わってしまっていることがありますが、どこが別の場所に設定メニューがあって、同じ操作結果が得られるなら、変更前のもので得た知識を取り込んで「同化」します。パソコンでなじみのあるソフトのスマートフォン版を使用するときには、全く別のものとして操作方法などを身に着ける必要がありますが、既存の知識を調整して取り組むことを「調整」といいます。

例えば、子供が「馬」のスキーマ情報を組み立てていくときには「毛が生えていてしっぽのある大きな四本足の生き物」という特徴を捉えて記憶します。新たに「牛」に出会うと、それが「馬」とは異なる別の生き物であるとして、新たな特徴を補足、修正し、同じ四本足の仲間として体系化していきます。あるとき、ミニチュアホースに出会って、その大きさが馬ほどではないため「犬」と呼ぶかもしれませんが、馬にも種類があるということを学ぶのです。

さまざまなタイプのスキーマ

モノスキーマ:いきもの、乗り物、身の回りのものなど、似たものや階層など体系立てて記憶されます。
社会的スキーマ:学校へ行く、病院へ行くなど、ある場所においてどのような行動をとるか、何が起こるか、どのようなときに行く場所かです。
事象スキーマ:イベントに合わせてとるべき態度、行動、タブーなどに焦点をあてます。お正月、クリスマス、冠婚葬祭などです。
役割スキーマ:警察官、学校の先生など、社会的な役割がある人が、特定の状況でどのような働きや反応をするのかというものです。
人物スキーマ:個人に焦点を当てた、見た目の印象や性格、特徴となる行動、好みなどの情報です。
自己スキーマ:自分自身について、現在分かっていること、理想の自分や、将来の自分などを含む情報です。
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