客観的に観察できる「行動」のみを重視
ヴントの構成主義では、「心とは要素どうしが結びついたものである」と考えます。
ヴントの構成主義を受けつぎつつも、はっきりと客観的に観察できる「行動」のみを重視すべきだと主張したのが、アメリカを中心に20世紀前半の心理学の主流となった、アメリカの心理学者ジョン・ワトソン(1878~1958)による「行動主義」です。
ヴントは、対象者の心の状態を知るための方法として、「内観(ないかん)」(対象者自身による自己観察)を用いました。しかしながら、自己観察できる心のはたらきには限界がある上に、そもそも動物や赤ん坊などは、心を自己観察すること自体できません。
パブロフの犬の実験から明らかにした「条件づけ」を基本とする「学習」こそが、心の要素の結びつきをつくるとワトソンは考えました。
人間での実験
1920年に、学習が人間の行動にあたえる影響を調べるために「アルバート坊やの実験」を行いました。
被験者は、生後11か月のアルバートという男児です。アルバートはもともと、ネズミを見せてもこわがりませんでした。しかし、ネズミを見せるのと同時に、大きな音を鳴らしてくりかえし怖がらせた結果、アルバートはネズミをこわがるようになりました。
アルバート坊やの実験は、条件づけによる学習が人間でもおきることを示しました。「人間は本能や遺伝(いでん)ではなく、子ども時代の条件づけによって形成できる。学習によって、どのような能力でも身につけられる」と主張したワトソンは「私に赤ん坊をあたえれば、医者にでも芸術家にでも泥棒にでも育ててみせる」と豪語したといわれています。
アルバート坊やの実験は、当時も物議をかもしました。もちろん、現在ではこうした実験は倫理的に許されるものではありません。
> はじめはネズミを見ても怖がらない
赤ん坊にねずみを見せるのと同時に大きな音を聞かせる
> 大きな音に怖がって泣く
赤ん坊にねずみを見せる(大きな音は聞かせない)
> ねずみを見ただけで怖がるようになる
人間は学習で能力が身につくと主張
この実験により、条件付けによる学習が人間の行動に影響をあたえるということを示しました。ワトソンは「人間は本能や遺伝(いでん)ではなく、子ども時代の条件づけによって形成できる」「学習によって、どのような能力でも身につけられる」と主張しました。