2種類の知能
知能は、遺伝と環境の両方の要素をもとに、年齢とともに発達すると考えられています。この発達は、いつまでなのでしょうか。また、身体能力は一定年齢をピークに、加齢とともに徐々に衰えていくものですが、知能はどの程度まで維持されるのでしょうか。
イギリスの心理学者、レイモンド・キャッテル(1905~1998)は、人の知能には「流動性知能」と「結晶性知能」の二種類があるとしました。
流動性知能
・記憶
・計算
・図形処理能力
・情報処理
・適応能力
・直観力
・処理のスピード
結晶性知能
・過去の経験から蓄積される能力
・コミュニケーション能力
・言語能力
・内省力
・自制力
流動性知能というのは、新しい局面に臨機応変に対応する能力で、これは経験や教育に左右されない、生まれながらに備わる能力と考えられています。この流動性知能は、加齢とともに低下していくと考えられています。一方、結晶性知能というのは、学習や経験が蓄積して結晶化したものとされていて、20歳以降も上昇し、高齢になっても安定して維持されていくと考えられています。
知能指数とは
アルフレッド・ビネー(1857~1911)は、実用性のある「知能検査」を初めて行ったフランスの心理学者です。この時実施された学校のカリキュラムについていけない発達停滞児を判別するための検査は、のちに改定され、知能を指数で表す「知能指数(intelligence quotient: IQ)」になりました。従来は「精神年齢(知的発達年齢)÷生活年齢(実年齢)×100」という数式が使われていましたが、現在では単純な計算式では算出することはなくなっています。現在はDIQ (Deviation IQ、偏差知能指数) で表すことが多く、同じ年齢集団の中でどういう位置にあるかという相対評価で算出しています。