鮮明に感じる重大事件などの記憶はソースモニタリングエラーを起こすことがある
大型自然災害や同時多発テロなどの重大事件は、日常的な出来事に比べて記憶に残りやすいことがわかっています。これらの出来事は感情的な衝撃が大きく、時間が経っても「その時」、「どこで」、「誰と」、「何をしていたか」について鮮明に思い出すことができます。このような記憶現象は、写真のフラッシュのように強く記憶に焼き付くため、「フラッシュバルブ・メモリー(閃光記憶)」と呼ばれています。大事件はメディアで繰り返し報じられるため、記憶がより長く、そして強く残ると考えられています。
しかし、こうした鮮明な記憶が必ずしも正確であるとは限りません。たとえば、大きな出来事の直後に実験参加者に「その時、どこで何をしていたか」を記録してもらい、一年後に思い出してもらうと、記録とは異なる内容を鮮明に覚えていることがあります。これは、記憶が時間の経過とともに歪むことを示しており、特に感情的に強い印象を受けた出来事ほど、再構成される際に細部が誤って記憶されることが多いのです。
閃光記憶が歪むのは、脳の前頭前野で記憶が何度も想起され、再構成されることによるものだと考えられています。「いつ」「どこで」という記憶は、脳内に雑然と保存されていて、バラバラのパズルのピースのようにそれをつなぎ合わせて思い出す役割を担うのが「前頭前野」です。出来事が記憶されたときには、日付などにはほとんど注意が向けられていません。それを強引に思い出そうとする結果、ソースモニタリング『情報源(ソース)を頭の中で探す』のエラーが起こるといいます。
たとえば、あなたが大切な誕生日の思い出を振り返るとき、最初は「赤いドレスを着て、ケーキを食べながらプレゼントをもらった」と記憶しているかもしれませんが、後になって「白いドレスを着て、プレゼントを開けた後に別の人と話していた」といった誤った記憶が混じり込み、実際の出来事とは違う記憶が形成されることがあります。
誕生日という出来事の中で、他のイベント(例えば、別の誕生日会や他のパーティの記憶)が入り混じり、それらが無意識のうちに一つの出来事として再構成されることがあります。感情的に特別な出来事であるため、記憶は強く残るものの、その内容や細部が誤って再構成され、実際とは異なる形で記憶されることがあるのです。
このように、特定の出来事が記憶される過程で、意図しない情報が紛れ込み、記憶が「創造的に」変化してしまう現象が起こります。
リアリティ・モニタリング
「胎内での記憶を覚えている」と話す人がいるが、実はこうした記憶は巧妙な対話で「埋め込める」ということがわかっています。いわゆる催眠療法を繰り返すうちに、自信のない記憶についても、確信をもって実際に起きたことだと確信を持つようになります。「エイリアンに誘拐された」という記憶も似た仕組みで起こります。
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