鮮明に感じる重大事件などの記憶はソースモニタリングエラーを起こすことがある
大型自然災害による重大事故や、同時多発テロなどの重大事件は、普通の出来事に比べて記憶に残りやすいものです。長い時間が経ってからであっても、「その時」、「どこで」、「誰と」、「何をしていたか」についても、鮮明に思い出せることがわかっています。このような記憶現象は、写真のフラッシュとたくことになぞらえて、「フラッシュバルブ・メモリー(閃光記憶)」と呼ばれています。重大事件は報道などで繰り返し見聞きするため、より長く記憶に残ると考えられています。
ところが、このような記憶が鮮明であることは、正確に記憶されているかどうかということとはまた別です。大事件の直後に実験参加者にどこで何をしていたかを聞いて記録しておいて、一年後に思い出してもらうと、記録とは異なることを鮮明に覚えていると回答することが報告されています。
閃光記憶が歪むのは、脳の前頭前野で記憶が何度も想起され、再構成されることによるものだと考えられています。「いつ」「どこで」という記憶は、脳内に雑然と保存されていて、バラバラのパズルのピースのようにそれをつなぎ合わせて思い出す役割を担うのが「前頭前野」です。出来事が記憶されたときには、日付などにはほとんど注意が向けられていません。それを強引に思い出そうとする結果、ソースモニタリング『情報源(ソース)を頭の中で探す』のエラーが起こるといいます。例えば、アメリカの同時多発テロの時に、実際には〈青い〉ネクタイをして〈会議中〉だったにも関わらず、「〈茶色〉のネクタイをしていた」、「書類を作成していた」などの誤った記憶を結びつけて思い出します。こうして思い出された記憶はソースモニタリングのエラーによるものであるため、誤りであるにも関わらず鮮明に感じられ、事実とは異なる記憶が作られます。
リアリティ・モニタリング
「胎内での記憶を覚えている」と話す人がいるが、実はこうした記憶は巧妙な対話で「埋め込める」ということがわかっています。いわゆる催眠療法を繰り返すうちに、自信のない記憶についても、確信をもって実際に起きたことだと確信を持つようになります。「エイリアンに誘拐された」という記憶も似た仕組みで起こります。
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