社会心理学

ゲシュタルト心理学を受けつぐ、クルト・レヴィン(1890~1947)により提唱された心理学です。
ゲシュタルト心理学では、人間の知覚は単なる要素の合計ではなく、要素の置かれ方などの環境によって決まると考えられており、社会心理学ではこの考え方を、知覚だけでなく、思考にまで適用しています。
人の考え方や行動が、他者との関係性や、個人を取り巻く集団などに影響されることに注目し、社会での人の心の働きを正しく理解するには、他者や周辺環境との関係が重要と考えました。好意の感じ方などの思考や、集団内での行動の仕方など、人の心と関係したさまざまな現象を、他者を含む社会などの周辺環境での置かれ方と密接な関係があると考えています。

クルト・レヴィン(1890~1947)
社会環境の変化が、人の心理状態を大きく左右することを実験的に検証したことから、社会心理学の創始者とされています。第一次世界大戦に従軍後、ベルリン大学でヴェルトハイマーらとともに研究していましたが、ナチスによる迫害から逃れるため、アメリカに亡命しました。「レヴィンの法則」、「場の理論」、「集団力学」などの理論を発表しました。また、研究理論を実際に現実の社会で実験し、フィードバックを重ねていくことで、実際に課題となっている社会問題を解決していく「アクション・リサーチ」を提唱しました。

レヴィンの法則 Lewin’s equation

B=f(P,E)
行動(Behavior)=人間性(Person)×環境(Environment)の関数

「行動はその人の人間性と環境との相互作用で決まる」という法則。
自身の従軍体験をもとに、人間の行動は、個人が本来備える人間性、価値観、欲望だけをもとに決まるのではなく、置かれた場(環境)によって左右されると考えました。

場の理論

行動は、人がおかれた「場(環境)」に影響を受けるもので、行動する人のパーソナリティや欲望と、誘発性を持つ対象・相手・状況との双方向の力が働くとする理論です。何か魅力的な対象や状況に引きつけられるような場には『正の誘発性』が生じており、反対にある対象や状況が、人を引き離して回避させようとする時には『負の誘発性』が生じているとなります。例えば、励ましてくれるコーチがいるなどひきつける要因がある場と、𠮟責ばかりする威圧的な指導者がいる遠ざけたくなるような場では、人の行動には違いが現れます。

集団力学(グループダイナミックス)

集団の中の個人の行動、集団から受ける個人の影響を研究します。

ある実験では、戦争の影響でたんぱく源である肉が不足していたため、レバーを食べるよう協力を依頼ししました。

Aグループには講師から戦争による肉不足の状況説明と、レバーの栄養価、臭いを消す方法などのおいしい調理法を解説しました。

Bグループには、食料事情の状況説明とレバーの栄養価などの情報提供を行った後、グループ内で「実際に調理して食べることができるか、どんな問題点があるか、解決法はあるか」など討議を行いました。メンバーそれぞれが結論を出し、「レバーを調理し、食卓に出す」と「自己決定」したことを発表したところ、話し合いを行ったBグループのほうがレバーを食べるという実行率が高かったという結果になりました。

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