パーソナリティを決めるのは、「遺伝」か「環境」か
性格や人格といった、個人差、その人らしさ、パーソナリティは、いつ、どのようにして決まるのでしょうか。
昔から、パーソナリティの要因についてはさまざまな説が唱えられてきましたが、大まかには「遺伝」によって生まれながらにパーソナリティが決まっているという「生得説」と生まれたあとに過ごす「環境」によってパーソナリティが形づくられるという「経験説」の二つに分かれます。
相互作用説
19世紀から20世紀にかけては、チャールズ・ダーウィンの進化論の影響を受けて、人間のパーソナリティもまた遺伝するという生得説が強く支持されていました。現在では、生得説も経験説のどちらかだけでは「パーソナリティの元」を説明することはできず、パーソナリティは遺伝と環境の両方の影響を受けて作られるという「相互作用説」が広く受け入れられています。最近の研究では、パーソナリティのおよそ50%程度は遺伝的な要因で、残りの50%が環境的な要因で作られると考えられています。
パーソナリティ心理学における双子の観察
パーソナリティ心理学では、双子を観察する手法が用いられることがあります。一卵性双生児は、1個の受精卵が細胞分裂の途中で2人の胎児に育つ双子で、完全に同じ遺伝子を持ちます。これに対して、二卵性双生児は2個の受精卵が母体内で同時に育つ双子であるため、遺伝的には普通の兄弟と同じ程度にしか似ていないということになります。同じ家庭環境で育った双子は、環境の影響がほぼ同じであるため、パーソナリティーに遺伝が及ぼす影響だけを抜き出して見積もることが可能だからです。調査では、神経質、外向性、開拓性、同調性、勤勉性、うつ傾向、自尊感情、一般的信頼、権威主義的伝統主義、理論的推論能力、言語性知能、空間性知能、学業成績における相関関係を一卵性と二卵性でそれぞれ調べましたが、すべての項目において、一卵性双生児のほうが類似度が高いという結果になりました。特に、勤勉性と論理的推論能力については、一卵性で高く、二卵性で低いことから、遺伝がより強く影響するといえるでしょう。
遺伝が与える影響
双子の片方が養子に出されたケースと、同一家庭で育った双子のケースを比較するという観察手法では、遺伝と、共有環境と、非共有環境の影響の違いが比較できます。この研究からは、言語性知能と学業成績については、共有環境、つまり育った家庭の環境がより強く影響するということがわかりました。遺伝がパーソナリティや知的能力に与える影響は、全体の30~50%であるということ、そしてそれ以外については、家庭以外の外部の経験などの環境の影響を受けているということがわかりました。
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