知覚の恒常性
認知心理学では、人の心をコンピューターのソフトウェアのようなものとして捉えていますが、私たちの心の働きはコンピューターほどには正確ではありません。心にはさまざまな「くせ」があって、「錯視」はその「くせ」をうまく利用しているのです。
「斜塔錯視」はカナダのフレデリック・キングダムによる視覚に関する恒常性を利用した錯視です。ピサの斜塔の写真を2枚並べると、右側の塔のほうが大きく傾いているように見えます。遠近感のある画像では、平行な2直線を遠くに伸ばすと一点で交わる消失点があります。1枚の写真に2つの並んだ塔があるならば、同じ消失点を持つ2つの塔の画像になるはずなので、全く同じピサの斜塔の写真2枚が並んでいて、それぞれの画像に消失点があるにも関わらず、脳には同じ消失点を持つ2つの塔に見えるため、右側のピサの斜塔がより傾いていると見えるのです。
「チェッカーシャドウ錯視」はアメリカのエドワード・エーデルソンが考案した、市松模様のタイルの上にある円柱の図です。市松模様のタイルがグレーの色調で、円柱の影の中にある明るい色のタイルが、光の当たるところの暗い色のタイルと同じグレーであるにもかかわらず、そうであることには気が付きません。これは「白と黒の市松模様の白いタイルが影に入ると暗く見える」と補正した結果です。日向の黒タイル、日向の白タイル、影の中の黒タイル、影の中の白タイル、のうち、実際は日向の黒タイルと影の中の白タイルが同じ色なのに、そのようには見えないのです。
目の前の物体の明るさが変化しても、私たちはそれが同じものと判断することができます。目に入ってきた光の情報が変わっても、私たちの心は常に観測対象を「同じもの」だと知覚できるのです。このような現象を「知覚の恒常性」といいます。形や大きさ、色、明るさなど、さまざまな知覚には、恒常性があるとされています。
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