組織課題

効率的な組織に必要なのは、意外にも「空気を読む力」

現在、生産性の向上は、営利企業にとどまらず、行政機関や医療・介護の現場、さらには個人の生活に至るまで、あらゆる領域で求められる重要な課題となっています。
社会全体で人材や資源の最適活用が求められる中、それぞれの立場で「限られた時間・人手でより良い成果を上げる」ための取り組みが不可欠となっています。
業務の効率化に取り組む中で、ツールの導入やマニュアル整備が進められているが、それでも改善が進まないという声は後を絶たない。非効率なコミュニケーション、属人化された業務、アナログ作業の残存、曖昧な責任範囲、無駄な会議、ツールの使いこなし不足、そして心理的安全性の欠如。これらはすべて、現場で実際に起こっている「効率を妨げる構造的問題」である。

だが、これらの問題を「仕組み」や「知識」だけで解決しようとすると、改善は一時的に終わることが多い。なぜなら、それらの根底にあるのは“非認知能力”の不足だからである。非認知能力とは、共感力、自己認識力、忍耐力、柔軟性、協調性、関係構築力といった、IQや知識では測れない「人間らしい力」である。

たとえば、情報共有の遅延が発生する原因は、単にツールがないからではない。「この人なら聞きやすい」「聞き返しても嫌な顔をされない」という信頼関係がなければ、情報は表に出ない。また、属人化された業務も、知識を共有することが「自分の立場を脅かす」と感じるような関係性であれば、どんなに整備されたマニュアルも使われることはない。

アナログ作業が残り続けるのも、紙や手作業に執着しているからではない。変化への不安、失敗への恐れといった感情が潜在的に存在するからである。非認知能力が高い組織では、新たなツールへの移行も「一緒にやってみよう」という雰囲気で前向きに進むが、そうでない組織では抵抗やサボタージュが起き、改革は形骸化する。

長すぎる会議も同様である。目的やゴールが不明瞭であっても、指摘する空気がなければ時間は浪費され続ける。改善提案が通らないのではなく、提案するだけで浮いてしまうという空気こそが、非効率の温床なのである。このような空気は、知識ではなく、感情で作られる。そして感情を扱う力こそが、非認知能力である。

心理的安全性が欠如している職場では、ミスを恐れるあまり報告が遅れたり、声が上がらなかったりする。これもまた、「感情を共有しても攻撃されない」という非認知的な感覚の欠如がもたらす現象である。したがって、業務効率化の出発点は、まずこの“感情的な安全”を確保することにある。

効率化を実現するには、技術よりも先に「人が安心して関わり合える環境」をつくることが先決である。そのためには、管理職が部下の心の状態に気づき、サポートできる感受性や、現場が互いの負担を思いやる共感性が求められる。これらはすべて、非認知能力に含まれるものであり、決して一朝一夕で習得できるものではない。

したがって、企業が業務効率化を本気で実現したいと考えるのであれば、ツール導入や業務整理の前に「非認知能力を育てる」取り組みを制度化することが必要である。研修やフィードバックの仕組みを通じて、自己認識力や他者理解を高める環境をつくることが、結果としてもっとも着実な改善施策となる。

見えない力を育てることで、見える成果が生まれる。効率化の真のカギは、非認知能力という「人間の力」に他ならないのである。

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