今、日本に求められる「幸せな人の思考」

世界幸福度ランキング47位の日本

国連が設立した持続可能開発ソリューションネットワークが発表する「2023年の世界幸福度ランキング」で日本は47位となりました。2022年の54位から順位が上がりましたが、先進国の集まりであるG7の国の中では最低順位となっています。

自尊感情「とても満足」日本10.6%、米49.1%

2014年国立青少年教育振興機構が、日本、米国、中国、韓国の4か国の高校生を対象に実施した「高校生の生活と意識に関する調査報告書」によると、自尊感情に関連する「自分自身に対する満足感」では、「とても満足」と回答した者の割合が、米国の49.1%、中国27.2%、韓国23.1%、日本は10.6%。「まあ満足」まで加えると、米国は8割強、中国と韓国は7割台、日本は5割台となっています。

「自分にとても満足している」と回答した割合

米国 49.1%
中国 27.2%
韓国 23.1%
日本 10.6%

「自分はダメな人間」と回答した割合

同調査内での自己肯定感に関連する「自分はダメな人間だと思うことがある」の問いに対して、「とてもそう思う」「まあそう思う」と回答した者の割合が日本は72.5%と最も高く、米中韓を大きく上回っていました。(米国45.1%、中国56.4%、韓国35.2%)

「自分はダメな人間」日本72.5%、韓国35.2%

日本 72.5%
中国 56.4%
米国 45.1%
韓国 35.2%
自尊感情(じそんかんじょう)とは、自分に対して「自分は良いという前向きな自己評価」をしているかというもので、自己肯定感(じここうていかん)と同じ意味で用いられるケースもあります。

自分は役に立たないと自己評価する日本の若者

そして、このようなデータもあります。内閣府による満13歳~29歳までの、男女を対象に、平成30年度に実施した「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」では、自尊感情に関連する「私は、自分自身に満足している」について、各回答に「そう思う(4点)」から「そう思わない(1点)」まで1点刻みで点数化した場合、日本の若者の平均値は2.31(4点満点中)。日本を除く他国(韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン)の平均値は3.07と他国に比べ著しく低い結果となっています。内閣府は「国によって異なる価値観で決まってくる部分もあり、単純に比較することはできない」とし、日本の若者の自尊心の特徴として「自己有用感」が「自分自身に対する満足感」と比較的強く関連していると分析しています。つまり自分が誰かの役にたっていると思えない人ほど、自分への満足感が低いということです。

自分は良いという前向きな自己評価平均値(4段階回答)

日本 2.31
他国(韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン) 3.07

非認知能力の楽観性や自尊心の開発が急務

これらの調査結果や、いくつかの研究から非認知能力である楽観性や自尊心、自己肯定感が幸福度に相関しているということがわかっています。

幸福度とは、人々がどれだけ幸福を感じているかを表す指標であり、一般的に、収入、健康、社会的関係、仕事、自己実現などにおいて満足感や充実感を感じることができる状態を表します。
この状態は、人生に対する前向きな見方によって達成できる心の状態ともいえます。多くの研究により、楽観的な人は悲観的な人よりも幸福で健康であることが数えきれないほど証明されています。

楽観性とは、物事を前向きに捉え、明るい未来を期待することができる能力であり、心の知能指数の1つです。逆境に対して「できる」という思考で立ち向かい、失敗や挫折から回復する力を持っているため自尊心や自己肯定感も高い傾向があります。自分を信じ、どんな困難にも立ち向かう準備ができるため、人生で直面するあらゆる状況に対処でき、幸せで長生きすることができます。また、問題が解決されるまで、忍耐強く、努力し続けることができ、さまざまなアプローチを試みる柔軟性もあります。

一方、悲観的な人は、怒りや悲しみ、絶望的な考え、罪悪感によって無気力や無力感に苦しむことがあります。悪いことが起こった場合に自分を責め、失敗が今後も続くと考えてしまう人もいます。悲観的な考え方によって自分のことをダメな人間・価値が無い人間と思っている人は幸せを感じることは難しいでしょう。

教育者、保護者がポジティブであれば波及する

楽観的な考え方は、リーダーや教育者、保護者にとってとても大切な能力です。人の感情は、周りの人に伝染するため、良い気持ちも悪い気持ちも周りを変化させます。この変化は物理的に体内へ変化をもたらします。
楽観的なリーダーや保護者がいる環境では、楽観的な思考を広めることができ、幸福感が高くてストレスの少ない環境を作り出すことができます。こうした環境では、問題にとらわれずに課題の解決策を見つけることができます。また、こどもたちの自己肯定感や自尊心を高め、幸福感のある子どもたちを育てることができます。

楽観的な思考に近づくために

前向きな視点に切り替えるくせをつける

楽観性がある人は、失敗やうまくいかなかったことではなく、うまくいったことに焦点を当てる思考の癖がついています。そのため、困難に直面してもネガティブなことに時間を費やすのではなく、自然と良い方法を探し、対処することができます。
まずは、自分がどちらの思考をしているか気づく必要があります。ネガティブなことを考えていたら、前向きな視点に切り替えてみてください。
「私には無理に決まっている」を「自分にはできる」、「きっと達成できないだろう」を「やれば達成できるだろう」といった悲観的な思考をしている自分に気づき、失敗した理由に時間を使わず、やるべき課題に集中するように心がけましょう。

捉え方を変える

楽観的な人は、考えすぎたり、ストレスを溜め込んだりしません。自分を信じて良い方向に考えますが、悲観的な人は悪い方向に考え、希望を失うことがあります。
物事が予定通りに進まなかった場合、失敗にばかり気をとられるのではなく、自分がどう行動したかをしっかり振り返りましょう。失敗を学びと捉え、次回、同じ状況に陥った場合に良い結果を出すためにどう行動したら良いかを考えましょう。

悪いことは永遠に続かない

ネガティブな出来事がこの先もずっと続くと思ってしまう人は、物事が変わらないと思い込み、考えることを避けてあきらめる傾向があります。
一方、楽観性がある人は「あらゆる出来事は一時的なものである」と理解します。「今回のこれだけは、うまくいかなかった」という考えです。
人生には困難や失敗、間違いがあるかもしれませんが、それらで全てが決まるものではないと考えます。

できごとを個人的に受け取らない

不幸や悪い出来事は、個人に向けて起こっているのではなく、それは、単に一つの出来事であることを理解する必要があります。世の中は、自分の人生を、他の人よりも大変にしたり、苦しめようとしているわけではありません。
そのため、悲観的な人は、不運な出来事が続いた際に「自分ばかりこんな目に合うなんて」と自分を責めたり落ち込んだりします。
しかし、楽観性がある人は、不幸や悪い出来事が自分に向けて起こっているのではなく、本当に、たまたま悪い出来事の連続で起こってしまったことを理解しています。

自尊心、自己肯定感を高める

自分自身の内面を見つめる時間をつくりましょう。自分と自分の対話をする時間です。良い部分も悪い部分もありのままの自分を受け入れ、他人と比較せずに過去の自分と比較しましょう。
自己肯定感を高めるためには、自分自身が大切に思うことに取り組み、成し遂げた経験を振り返ることも大切です。
また、自分にとって良い環境や交友関係をつくってみましょう。例えば、趣味のサークルやボランティア団体に参加することで、同じ趣味を持つ人たちと交流することができます。市町村のホームページや公民館などの情報を検索してみましょう。
家族以外のコミュニティに属し「周りから必要とされている」、「誰かの役にたっている」と感じることで、自尊心や自己肯定感を高めることができます。
外見やスキル、知識など、自分自身が魅力的だと感じる部分を磨き、自分に対するイメージを変えることも自信をつける方法の一つです。
最後に、自分自身に対して優しく接することも大切です。自分自身に対して優しく、理解的であり、自分自身を受け入れることをセルフコンパッションと言います。自分の失敗や弱点を非難するのではなく、自分自身を受け入れ、穏やかな態度を保ちましょう。

前向きな考え方を持つためには、自分を信じる力、自分は大丈夫と思える力、土台となる自分の軸が必要になります。そして、ネガティブなことばかり考えていることに気づけたら、意識的にポジティブな感情に焦点を合わせることを選択します。「気づき、方向転換する」これを何度も繰り返すことで、楽観的な感情の経路がつくられていくのです。

・国連,2023年の世界幸福度ランキング,2023,https://worldhappiness.report/
・国立青少年教育振興機構,「高校生の生活と意識に関する調査」における国際比較(機構サイトがリンク切れのため長野県松本市のサイトを参照),https//www.city.matsumoto.nagano.jp/Fuploaded/Fattachment/F10043.pdf
・内閣府,我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 (平成30年度),2018,https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/ishiki/h30/pdf-index.html
・Seligman,M.,&Csikszentmihalyi,M.(2000).Positive psychology:An introduction. American Psychologist,5–14
・UnsplashのAksonが撮影した写真

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