長く一緒にいるパートナーには、相手の癖や欠点にイライラしたり、非難してしまうことがあるかもしれません。
友人や職場の同僚には気を遣えるのに、自分と近しい人には思ったことを感情のまま素直に言ってしまうことがあります。
人間は瞬間的に湧き上がる感情に流されてしまう傾向がありますが、その原因は脳の構造にあります。
人間は進化の過程で、生き残るために感情を発達させました。
恐怖、怒り、幸福、愛情は、生命を維持するために必要な重要な感情です。
恐怖は身を守るための反応、怒りは自己防衛のための反応です。一方、幸福や愛情は社会的なつながりを強化し、生存に必要な感情です。
やがて、人間の脳は高度な機能を獲得しました。そして現代の人間は、理性と感情の両方を持っています。
大脳新皮質は、論理や判断力、思考力などを司り、大脳辺縁系は、感情や記憶、欲求などを司ります。
この2つの領域は、人間が生きていく上で必要不可欠なものであり、バランスよく機能することが重要です。
通常は大脳新皮質によって感情をコントロールできますが、「感情のハイジャック」と呼ばれる現象では、コントロールできないほどの強い感情(強い感情を情動(じょうどう)とも呼びます)が押し寄せます。
感情のハイジャックは、大脳辺縁系にある扁桃体によって引き起こされます。扁桃体は、外部からの情報や体内からの情報を受け取り、安全か危険か、快か不快かを判断し、問題がある場合は緊急のメッセージを送ります。
これは、自己防衛のために必要な機能です。しかし、感情のハイジャックによって、感情による緊急メッセージが強いため、自分の思考と感情をコントロールできなくなることがあります。
この脳の構造や仕組みを理解していると、つい、カッとなり強い言い方をしてしまったり、相手を無視してしまった場合、自分がなぜその発言をしたのか?なぜその行動を取ったのかを客観的に捉えることができます。
無意識に取っている行動を自分の意識下に置くことで自分の感情や行動パターンを認識することができるようになります。そして、行動パターンがわかるとその行動をどう変えたらいいのかがわかってくるのです。
感情のハイジャックから脱出するための3つのステップ
1.自分の感情を特定する
自分が今、何を感じているのか、何がその感情を引き起こしたのかを考えましょう。過去の出来事や背景が関係している場合もあります。怒り、傷つき、恐怖などの否定的な感情をありのまま認識し、認めましょう。自分は今怒っている、悲しい、虚しい、切ない。色々な感情があります。なぜその感情になったのかを考えることでより自分の感情を客観的に捉えることができるようになります。
2.クールダウンする
否定的な感情は私たちを圧倒し、判断力を鈍らせます。一度立ち止まり、休憩し、緊張を和らげましょう。その場を離れて一呼吸したり、読書や散歩、瞑想やストレッチなどをしてリラックスしましょう。
3.パートナーと向き合う
穏やかな状態に戻ったら、生産的な会話を始めましょう。相手を批判せず、攻撃的にならず、何のための話し合いなのかを明確にし、自分の気持ちや意見を伝えます。パートナーの話を遮らずに聞き、相手の気持ちも認めましょう。
再び否定的な感情が湧き上がってきたら、一旦休憩してから話し合いましょう。
EQの活用に慣れている人は、瞬時に湧き上がる感情を、瞬時に認識する癖がついて、感情と理性のバランスを保とうと意識します。言葉を選び、相手の気持ちにも配慮することで、前向きな話し合いができるのです。そして、お互いに感じることを共有し、良いことも悪いこともオープンに話し合うことで、良いサイクルをつくることができます。また、日々の生活で感謝の気持ちを伝えたり、小さなイライラをコントロールしたり、お互いの良いところを見つけることが自然とできます。
まずは、自分の感情を認め、理解し、表現することを意識しましょう。ネガティブな感情は問題ではありません。問題となるのはその表現方法です。感情からの情報を見逃さず、感情を正確に表現することは、コミュニケーションの改善に役立つでしょう。